はたはたと揺れるぬるい雨。
波紋をつなげて世界を濡らし、傘に弾かれてパタンと鳴った。

「雨だとちょっと寒いね」

隣を歩く零が空を見上げて呟く。
曇った薄暗い空。けれど空の端っこは薄く薄く、次第に明るさを増している。
傘を持ち直す。ぱたぱたと垂れた雫が詠った。

「甲斐は平気?」

周りの木々を、道路を、世界を濡らしていく雨。
傘の下だけ区切られたように。ぱたりぱたり、輪の外で雫が撥ねる。

「あっためてやろうか?」
「あとでね」

さらりと返された返事と笑みに、おやと隣を見下ろす。
いつもより穏やかに機嫌のいい零は、雨のせいかもしれないと思った。

はた。はた。
静かな音を立てて雨が降る。世界は透き通って見えた。



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